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◇上手く伝えられるだろうか 第69話

Author: 設樂理沙
last update Huling Na-update: 2025-04-18 06:04:36

69

根本圭司は早い段階から覚醒し、野茂美鈴のことを過去世で深い縁がある

相手であることを認識しており、ようやく今生この地で彼女と接点が持て

たわけだが……。

野茂美鈴は過去の記憶を一切持たず自分の目の前に現れた。

だから、難しいのはいかに美鈴に警戒心を持たさず自分を振り向かせること

ができるかがキモになる。

実のところ、彼女が自分と再会する前に野茂知紘と結婚してしまった

ことは、痛恨の極みであった。

すでに自分には、大学を決める時に就職先も見据えたご神事というものが

降り、その通り身寄りの1人もいないこの地に東北の地より移ってきた。

そして他の男と結婚をし、他の土地に住む美鈴のことを知るにつけ、

何ともいえない気持ちを味わってきたのだ。

しかし、とにもかくにも彼女は奇跡のようにこの地へとやってきた。

だから、惜しむらくは身に起きていることは予定調和であったのだろうと

思うしかない。だが、それにしても……だ。

彼女は今だ夫と籍は抜けていないのではないだろうか。

この足枷のある彼女とどうやれば今生、結ばれることができるのか、

頭の痛い根本だった。

「先週の話の続きを、できればと思っているのですが、午後からの時間

大丈夫でしょうか? なるべく完結に、とは考えているのですが……」

「時間の方は大丈夫です。ぜひ、聞かせてください」

野茂さんの表情から何やら期待が込められているようで、上手く伝えられる

か不安になってきた。

だが、話すつもりならお互いのため、あまり焦らすようなことはしたくない

と思う。

上手く伝えられるかは自信がないが、俺は覚悟を決めて話すことにした。

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    70 ― 手をかざし初めてのビジョンを見せられる ― これは僕がビジョンで見たもので年代はハッキリしませんが、おそらく着ているものなどから平安時代辺りではなかったかと思います。だとすると800年~1200年前。その時、僕たちは恋仲でしたが周囲のさまざまな思惑に翻弄され引き裂かれてしまいました。ビジョンの中に屋敷が見えず、ただ昔の人たちがお茶会やら何やら催し物をする時に使うような緑のたくさんある場所でした。1部分だけを映像で見ているのでもしかすると館がありその中にある庭園なのか、単に外部にある場所なのかは分かりませんでしたが、あなたが泣いている姿が目に焼き付いています。あなたとはそれきりでした。そのあと、僕は病に侵され絶命するのですが、その折に『この先何年かかろうとも愛しい嬉子《きし》殿にお会いしとうございます。どうか私めに力をお貸しください』と、今際《いまわ》の際《きわ》に神様にお願いしました。「その過去世の私の名前は嬉子というのですね」「そうです。今際の際、僕がそのように呼んでいましたから」「その当時の根本さんご自身の名前は分かります?」「春津《ハルツ》です」「へぇ~、どちらも現代からは想像もつかない名前ですね。あのぉ~、ビジョンに出てきた嬉子さんって過去世の私のようですが、もちろん見た目は今の私とは違いますよね?」「ちょっと視てみます?」「えっ、私にも見えるんですか?」「やってみないと分からないですが」「見られるのなら、見てみたいです」「じゃあ、もう少し前のめりで僕の方に近づいてください。それで片方だけでいいので手の平を僕の方に向けてくれますか」「はい」美鈴が手の平を根本の方へかざすと、「では、ちょっと失礼」と言ったかと思うと根本は美鈴の手の平に自分の手の平を合わせた。「じゃあ、目を閉じていてください。僕の方からビジョンを送ってみますので、できれば第3の目と呼ばれている辺りに意識を集中してみてください」2分3分4分と時が過ぎ……「あっ、見えました」美鈴の一声でふたりの手の平は離された。「どうですか?」「泣いてる私の側にいたのが過去世の根本さんなんですね」「そうですね」「何か、ちょっとうるっときました。見た目は2人とも今とは違ってるように見えました」「僕の話信じられそうです

    Huling Na-update : 2025-04-18
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    Huling Na-update : 2025-04-19
  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇アプローチも断り 第72話

    72  このあと、根本さんが簡単に先ほどの話の続きで神事が降りたとはいえ、行き先がこの地であると分かるまでには少し大変だったのだと話してくれた。          ◇ ◇ ◇ ◇夢見せでまず見せられたのが『関西』の二文字。三日続けて見せられのだが、関西と言われても2府4県。大阪・京都・兵庫・奈良・滋賀・和歌山。範囲が広すぎた。その時の根本は唯一思いついたことをしてみたという。紙に2府4県をメモ書きにして貼り付けておくことにしたのだ。すると、翌日には『京都』と書かれた文字の上に汚れが付けられていた。たまさかの偶然かもしれないと、また新しい紙に書き古いのと差し替え、貼り付けた。すると翌日も前日と同じように『京都』と書かれた文字の上に汚れが付けられていて、それを見て行くべき道が分かったという具合であった。          *****根本は得意科目が理系寄りだったこともあり、高校では理系のクラスに入りそのまま理系の大学に進み、仕事も土木に進み、女っ気のない環境で過ごしてきた。それでも容姿端麗で勤勉、リーダーシップのとれるほど仕事もできたため、毎年新入社員がちらほらファンと化して1階から根本のいる7階へと覗きに来るほどだった。またバレンタインにはメルアド付きのチョコを共用フロアーやエレベーター内で貰ったりと、女性の少ない環境にいるわりには結構アプローチされることが多く、自ら望めば適齢期までに交際をし、結婚まで成し遂げられる機会には充分恵まれていた。しかーし、10代の頃から過去世を知り、ずっと心に誓った古の恋人を待つと決心している筋金入りの強者のこと。どの女性からのアプローチもやんわりと断り《蹴散らし》ながら、過去世で引き裂かれ悠久の時を超え、その相手である美鈴の出現を待ち続けていたのである。

    Huling Na-update : 2025-04-19
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    73美鈴はすぐに行動を起こすことにした。 緑の紙《離婚届》を知紘に郵送。『記入が済めば取りに行きます』とメモを添えて。思えば知紘が泥酔して帰り、美鈴に対しておばさん発言をしたあの日から、 7か月余りの月日が流れていた。美鈴にとっては、もう2年も3年も前の出来事のように思え、 知紘はすっかり過去の人になっている。この先この地で、独りで生きていくつもりで籍のことは 余り考えていなかったのがほんと。だけど、この1~2週間で事情は大きく変わってしまった。何としても籍を抜かねばならなくなったのだ。知紘にしたってこの先死ぬまで誰とも再婚もせずあの家で 独り朽ち果てる気概があるとも思えない。メモ書きには、離婚届に判を押さねばそのような孤独死が待っていると 匂わせる走り書きを添えてある。『婚姻関係が続くとも自分は一生知紘の元へは帰らないと……』万が一、知紘に判を押してもらえなかった場合は、知紘の浮気を盾に 裁判するしかないと、そこまで美鈴は腹を括った。 唯一の失敗は、籍を抜くことを最重要視してなかったこと。 別居できればいいとしか考えておらず……そんなだから証拠を突き付けて 知紘と真知子から慰謝料を取るなどということも面倒で、ほぼ証拠がないの が非常に痛い。こうなってみれば、あとの祭りというヤツだ。 若い女が好きな知紘のこと、判を捺《つ》くのを渋り続けた場合、一生 料理も出てこないあの家で暮らさなければならないことになると悟れば、 すんなりと離婚届に判を押すのではないだろうか。 離婚届を夫に送った日から、『夫は判を押す』『判を押さない』などと交互に気持ちが振れ、まるで花びら占いでもするような心持ちで 美鈴は日々を過ごした。 いきなりでは驚くと思い、メールでも『離婚届に判子を押し署名も 済ませたら取りに行くので連絡してほしい』と書いた。

    Huling Na-update : 2025-04-20
  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇お洒落な元妻 第74話

    74知紘からのメールの返信は翌日返ってきた。そこには『なるべく早く出せるように善処します。来てもらうのは土・日になるので、再来週の土曜か日曜に取りに来てください』とそのように書かれていた。厳密に言うと美鈴が家を出て70日足らず。まだ3か月も経っていない。短期間であっても夫も何か思うところはあったのかもしれない。どうか、このまま夫の気持ちがぶれないようにと願いながら美鈴はその日を迎えた。            ◇ ◇ ◇ ◇この日の美鈴の出で立ちはというと、オーソドックスな黒のロングコートと足元は同じく黒色のハーフブーツ。手にはショートの持ち手の付いた同系色のバッグ。その真ん中には白うさぎのワンポイントが施されていた。インナーはスカート部分がフレアースカートになっていて膝下まである長袖ワンピースでベージュ色。そしてヘアーはというと、ふるゆわパーマをかけておりいい感じにお洒落なセミロング。知紘との生活では久しくこのような独身者のように見える華やいだ姿は見せていなかったかもしれない。実際、久しぶりに自宅に戻った美鈴とリビングのテーブルセットで対面した時、綺麗に着飾り華やいで生き生きとしているしている妻を見て知紘は驚きを隠せなかった。だからか、自然と言葉が口について出た。「誰かいい奴できたとか?」「とんでもない。私はそんなにたった2か月やそこらで誰かに口説かれるほどモテないわよ」「どこに住んでるんだ? 働いていないのに生活、大丈夫なのか? 今日少しだけどお金おろして来てるから、持っていけば」「ありがと。正直助かります」私はお礼を言ってお金を受け取り、知紘が用意してくれた離婚届も一通り目を通すと両方をバッグにしまった。早くに記入してくれて助かったわ。じゃあ、もうこれで会うこともないと思うけど、元気で」「あぁ、美鈴も」台所には小さな片手鍋にうどんの鉢、箸にお玉などがシンクの中に置いてあるのが見えた。カップ麺ばかり食べず、少しは自炊をしている様子が伺えた。嘗ては愛する夫のために腕を振るったこの台所に、夫自身が使った器具と食器が置かれている光景が不思議に思えた。それとともに自分が大きな感情の振れ幅もなくここにいられるのは、根本さんというこの先自分の大きな後ろ盾となるであろう人の力かもしれないと思

    Huling Na-update : 2025-04-20
  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇あったのか否か 第75話

    75 ―手かざしビジョン2 その昔身体を重ねたことがあったのか否か―知紘のところへ離婚届を貰いに行った日は、勤め人の知紘の都合でクリスマスイヴになってしまった。翌クリスマスには、根本さんを自宅に招待して手作りの苺ケーキとコーヒーでクリスマスを祝うことにしていた。根本さんが訪ねてきたのは夕方近くになってからだった。彼はケンタッキーフライドチキンを抱えて現れた。「これ、後で一緒に食べましょう」「わぁ~、ケンタッキーフライドチキン、うれしいっ。でもイブもですが今日なんてすごく混んでたんじゃありません? 何だか申し訳ないです」「実は前々から予約してあったので取りに行って受け取り清算するまで10分ほどでした」「ありがとうございます。あとから、レタスやトマトのサラダを付けてお出ししますね。ケーキで結構お腹膨れてしまうと思いますから」私たちは椅子に座り、2人きりのパーティーを始めた。テーブルにはケーキとコーヒー、そして定番のみかんなどを並べて……。「「メリークリスマス!」」ケーキを食べ終えたあと、私たちは古の2人の気持ちに少しでも繋がることができればと、少しの間、手と手を合わせビジョンを視た。美鈴はこの頃からある疑問を持っていた。大層好き合っていた自分たちは、その昔身体を重ねたことがあったのか否か。一度めのビジョンでは別れの抱擁だったのか、2人が抱き合い悲しみに暮れているシーンで静止画のように見えた。そして2人の深い悲しみが心の中に流れ込んできた。そして、今回は少し遡った時間軸のシーンのようで、肩を並べて仲睦まじく語らいながら散策しているシーンだった。見ているとふたりの互いに想う気持ちの強さが心の中に入ってきた。

    Huling Na-update : 2025-04-21
  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇離婚成立 第76話

    76私は翌日早々に離婚届を出しに行った。昨夜、よほど根本さんにもう夫から離婚届を受け取っていて、あとは出す だけであると話そうかと思ったのだが、やはりちゃんと届けを出したあとで 正式に離婚し、何のしがらみもなくなってから伝えた方がいいように気が して、話せていない。できるだけ早く伝えたいという思いから、離婚届を出した後すぐにメールで 伝えようかとも思ったけれど、これってメールで伝えるようなことじゃない ような気がするのよね。それで年内に話すことができればいいのにとうじうじ考えていたら、数日後 に根本さんから『除夜の鐘を聞きに行きましょう』とのお誘いがあり、何と か今年中に報告できそうな予感。大晦日になり、私たちは約束通り近隣のお寺《本能寺》に向かった。歩きながら道々、私は真っ先に 「実は先週夫の所へ行って離婚届を受け取り、月曜日に市役所へ行き、 出してきました」と、離婚が成立したことを話した。 「ちゃんと受理されましたか?」「はい、思ったよりあっけなかったです。 家を出た時は、いつかはっきりと離婚が決まって届けを出す日がきたら、 未練なんてこれっぽっちもなくても、多少感傷的にはなるのかもしれない って思ってました。けど、そういう感傷的になんてちっともならなくて、さっぱりとした気持ちむで役所から帰って来れました。たぶん根本さんのお陰だと思います」「なら、良かった。 じゃあ今からあなたのこと、下の名前で呼ばせてください」「はい」「美鈴さんも僕のことは圭司《けいし》と呼ばないと駄目ですよ」「はいっ、が……頑張ってみます」「うれしいです。あなたにしがらみがなくなって。 これでお天道様に恥じることなく付き合えますからね」「はい……」私は心の中で彼に謝罪した。『ごめんなさい。一度、他の誰かと結ばれてしまった身で』と。これは心の中でずっとこの先も思い続けると思う。だけど、彼に言うつもりはない。 こんなことを言ってしまえば、彼を嫌な気持ちにさせるだけだと思うから。 私が結婚する前に私たち、出会えれば良かったのに。だけど、欲張ってはいけないのかもしれない。 出会えてなかったことを考えてみれば、こんなふうな再会になったとはいえ、 今生で今からでも夫婦になれるような形で出会えたのだから。 しみじみと感傷に浸

    Huling Na-update : 2025-04-21
  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇畑仕事 第77話

    77 年が明けて1月は寒かったので、どちらかの家で過ごすことが多かった。そんな中、ドライブを兼ねてお寺巡りなどもした。そして2月の初旬の土曜日にはウォーキングをして、なまった身体を引き締めようということで、寒い中、その辺を散歩することになった。7~8分歩くと、ちょうど草ぼうぼうになった我が家の畑の側を通ることになる。足を止めて、私は根本さんに言った。「ここ家《うち》の畑なんです。数年前までは母の知り合いに野菜を栽培してもらってたのですが、その方もご高齢で足腰が弱ってきて作れなくなってしまって……。そのあとは若い人の知り合いもいませんでしたし、私もここからすぐに通えるようなところに住んでなくて、その上、そのあと父が亡くなり母親は再婚して遠方へ嫁いで行き、というようになって、結局畑は今のような状況になってしまいました。でも落ちついたら少しずつでも野菜を作ってみたいなぁなんて考えてはいるんですけど、広くはない畑ですがそれでも私一人だとちょっと手に余りそうな感じです」「野菜をもう一度作るための土にするのは手作業だけではできないですからね。家に車で運べる小型の耕運機があるので今度持ってきますよ」この日そんなふうに言ってくれた根本さんは翌週、約束通り畑まで運んでくれてその上、自ら畑をその耕運機で耕してくれた。今年は畑の回復を目指し植え付けをせず、自宅の庭や公園などで拾ってきた落ち葉を梳き込み除草剤は使わずに定期的に耕していけば、雑草の根も繁殖せずに秋には枯れた形になり、土と落ち葉も撹拌《かくはん》されるので来年は良い土壌になるんじゃないかと考えている。ということで、植え付けは来年までのお楽しみだ。何を育てようかなと考えるだけでもあぁ楽し。こうして1月のデートは畑の土壌作りに終始した。そして作業終わりには我が家でのまったりお家ごはんに会話タイム。

    Huling Na-update : 2025-04-22

Pinakabagong kabanata

  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇行き違い 第84話

    84俺は知らないことにして尋ねた。だって、薔薇の部屋で勝手に覗いて読んだなんて言えないよ。「言って、それが何だったのかはっきり教えてくれないか」「綺羅々と奈羅が一夜を共に過ごしたと分かる映像が透明タッチパネルに送られてきたの。すごく悲しかった。私も綺羅々のこと好きだったから」もしもここで何も知らずに真実を知ったならと思うときっと、なんと怖ろしや、自分は混乱してしまったことだろうと思う。やはり、自分の知らないところで薔薇は苦しんでいたのだ。しかし、そうは思うもののせめて薔薇が自分を責めてくれていたら……と、到底無理なことまで考えてしまう。なんであの日酩酊状態になるまで酔っぱらってしまったのか、自分。なんで、もっと早くに薔薇に好きだと口に出して言わなかったのか。考えても考えても、後悔ばかりが襲ってくる。僕たちは奈羅の手によって両片想いを断ち切られていたのだ。しかも、薔薇も自分と同じ気持ちでいてくれたことを知った今では奈羅の所業は許せるものではなかった。そして薔薇を傷付けたことも到底許せはしない。「ただ酔っぱらって寝てただけなのに、君と僕の仲を裂くために奈羅が何かあると勘違いしそうな映像を君に送ったんだ、きっと。それが真相。あれから僕は君を上手くあの時の時間軸の金星にどうにかして連れ戻したくて、長老の所へ行き勉強してきたんだ。さぁ、まだ間に合うから僕と一緒に行こう」「綺羅々、ごめんね。私、ちゃんとあの時あなたに向き合えば良かった。でも好きだったあなたに奈羅とのことは本当にあったことだと……奈羅のことが好きだと言われるのが怖かった。本当に好きなのは彼女で私とは軽い気持ちで飲みに誘っただけだと知るのが怖かったの。早とちりして、地球に逃げてしまってごめんなさい。こんな私の事を長い間待っていてくれてありがとう。だけど……」「だけど?」

  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇現世を離れる 第83話

    83 ―――――――――― 夫からの今際の遺言 ―――――――――「古の契りを結んだあの時よりも、一緒に暮らせた今生でもっともっと君を 好きになった。 今までこんなに人を愛したことはない。絶対次の世でも一緒になろう。 もしも、美鈴がはぐれてしまったとしても僕はまた何年、何十年、何百年か かろうとも這ってでも君のところまで迎えにいくよ。だから待っていて」『―――――― で待っていて』と夫は呟やきあの世へと旅立っていった。             ―――――――――――私は子供たちに見守られながら、現世を離れた。 今はあの世と現世の狭間にいる。 先に逝ってしまった夫は今どこにいるのだろう。 いないはずの夫の姿を探していたら見知った顔が近づいてきた。「綺羅々、どうして……」 「薔薇《美鈴》、君が誤って地球に生れ落ちてしまった時は本当に つらかったよ。 どうしてあんな場所に連れていったのかと自分を責めもした。 それで長い間君が地球での一生を終えるのを待ってたんだ。 迎えに来た。どう? 金星にいた頃のこと思い出した?」「どうして地球に来て私を慰めてくれたの?  そしてどうしてこんなところで私を待ってるの?」 「薔薇のことが好きだからさ」「そうだ、私、薔薇って呼ばれてたのね」「思い出せたんだ、良かった」「でも、あなたは奈羅のことが好きだったんじゃ……なかったの?」「違うよ、僕は君が……君のことが好きだったんだよ」 「嘘っ。私はあなたに振られたと思い裏切られたような気持ちになって、 それが辛過ぎてあの日、わざと滑り台の上から地球上に滑り降りたの」「どうしてそんなふうに思ったの?  あの日は酔い過ぎて失態を晒してしまったけど、僕は薔薇と初めていっぱい 話せてすごくうれしかったのに」「だって……奈羅から見たくなかったものが送られてきたのよ」

  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇美鈴と圭司夫妻のその後 第82話

    82美鈴と圭司夫妻は、結婚して2年後に娘を授かった。そして、そのまた2年後に息子を授かり、彼らは4人家族となる。結婚後、立て続けに2人の子供に恵まれた美鈴は、元々在宅仕事をしていて融通が利くため、下の子が4才になるまでほぼ専業で暮らした。なので、贅沢はできなかったが、休日になると圭司が子育てや家事をできるだけフォローしてくれ、ストレスが溜まりがちな子育ても楽しみながらでき、2人の子供たちに思い切り愛情を注ぐことができたことは、非常に喜ばしいことだった。そして、いつも美鈴のことを気遣い子供たちにも愛情をたくさん注いでくれる圭司との暮らしは、美鈴にとって夢のようでもあり理想的な人生となった。好き合って結婚した相手から裏切られるという経験をしていた美鈴は、再婚にあたり実は少し不安を抱えていた。どんなに誠実な人でも心というものを持つ人間には、心変わりというものが常に付きまとい、誰がいつ新しい出会いで気持ちに変化が訪れるのか、誰にも分からないものだから。              ***やがて、子供たちそれぞれに愛する人ができ、彼らが家庭を持った時、美鈴は感慨い深いものを感じた。私と夫はまだ今でも信頼し合い愛情を持って一緒にいられる。これは本当に幸せなことだわ、と。そして、家から子供たちが巣立ち、また元の2人の暮らしに戻り日々の暮らしを積み重ねる日々の中で、1日また1日と夫と仲睦まじく過ぎてゆく日々に感謝と喜びを胸に刻み続けるのだった。          ◇ ◇ ◇ ◇そのようにして2人の愛しき人生はその後も続き、85才で圭司は天寿を全うし、美鈴もあとを追うようにして2人の間にもうけた息子と娘に看取られて、88才老衰で長患いすることなく別の次元へと旅立っていった。     ――――――――――――――――――西暦2022年からお話は始まっていますので、根本圭司が亡くなるのは――2077年頃 根本美鈴が   〃    2075年頃 すごいっ、どんな世界なのでしょう。                   ――――――――――――――――――          

  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇切ない夜 第81話

    81大好きな男性《ひと》の肌に触れ続けていくうちに、声にして出《だ》そうなんて思ってもみなかった言葉がいつの間にか零れ落ちる。「あなたが赤ちゃんだった頃、ヨチヨチ歩きを始めた頃、たどたどしく話ができるようになった頃、運動会で走っている姿、学生服を誇らしげに着ている姿、大学生のあなた……どのあなたも見ておきたかった。私を見つけてくれてありがとう」そう告げながら美鈴はいつの間にか圭司の背中に全身を預けて、そして泣いていた。この時の美鈴の心情は、恋人としてだけではなく母性の加わった母親でなければ感じられないような域にまで達していた。それまで美鈴の下で心地良さとともに美鈴の重みに耐えていた圭司が美鈴を抱きかかえるようにしてグルリと身体を動かし2人の位置が反転した。圭司が美鈴を組み敷いた格好になり、美鈴の目に溜まる涙を親指の腹でひとすくいしたあと、近くにあったティッシュを渡してくれた。「ありがと。君のやさしさが心に染みたよ。幸せなのにすごく胸が苦しい。この苦しさを解放したいな」そう言うと圭司の口付けが、美鈴の顔の上に落とされ、やがて口元へそして最後に唇へとやってきた。幾度となくはまれ、ついばまれ、美鈴は切なさと喜びが綯《な》い交ぜになり何も考えられなくなる状況の中、されるがまま圭司の行為を受け入れた。この夜のことは、二人にとって生涯忘れがたく素晴らしい時間になったことは言うまでもない。このようにして、この旅で互いの絆をより一層深めて帰路についた2人は、バタバタとその後、それぞれの遠方に暮らす両家の親に挨拶に行き、結婚式も挙げず記念撮影のみで籍だけ入れて結婚を済ませた。                

  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇初夜 第80話

    80 「有難いけど……君よりデカい僕の身体を抱くのは難しいんじゃない?」 「そうなの、そこが大問題なんだけどでも抱きたい。 どうしたらいいかなぁ~」「じゃあさぁ、取り敢えず君の前に滑り込んでみようか」「うん」 『馬鹿だなぁ~そんなの無理だよ』とか一刀両断せずに、協力してくれる 彼に私は増々恋心と切なさとを募らせた。私の両脚の間に座った……座ってくれた彼、疲れるだろうに程好い加減で 私に半身を預けてくれる。 到底私が腕を回しても両手を組めそうにもない彼の身体を後ろから抱きしめる。 私は彼の逞しくてきれいな肌の背中に顔を埋《うず》めてみる。「いい匂い……石鹸の匂いがする」「いい気持ち、背中でいい気持ちになったのは初めてだよ」「「ふふっ」」 「ありがと。この体勢だと圭司さん疲れるでしょ。 あのね、ほんとに気持ち良くなってもらいたいから今度はうつぶせ寝に なってください」私がそう言うと、うつ伏せの体勢になるため起き上がった彼が、座っていた 私の手を取り、立ち上がらせてくれた。 そして「じゃあ僕も少しの間ハグさせて」と言い、私はしばらくの間 彼に抱きしめられた。そしてそのあと、彼はベットに横たわりうつ伏せになった。「えーっと、今から私がすることって私にとっても初めてのことだという ことを知っておいてください。他の誰にもしたことがないことをさせていただきます」 『誰にでもするような変な女と思われたくなくて先に断りを入れた』「うん」圭司さんは俯いたまま返事をくれた。 今からしようとすることを考えると、こちらに視線を向けられなかったこと は有難かった。私は彼の腰辺りの位置に両膝をついて彼を愛でていくことにした。まず彼の肩から腕にかけて何度も両手で撫でた。背中、腰にも手を延ばし、マッサージを続ける。 「気持ちいい……」と言う彼の呟きが聞こえ嫌がられていないことを知り、 続けてそのまま愛でるように首筋から始まり腰までを、何往復も両手で緩急 をつけマッサージを続けた。

  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇その時がきた 第79話

    79◇その時がきた私たちはこれまでのようにまったりと2人の時間を紡いでいた。いつも会っている時は彼の存在を感じて幸せだった。そして別れ際におでこに軽いタッチのキスを落とされたことは二度三度あったけれど、そこ止まりの付き合いが続いた。そうそれは、まるで学生のような清い付き合い方だった。そのせいか週末会える時は、1週間分のトキメキとドキドキ感が半端なくいつかその日を迎える日がくれば、自分はどうなってしまうのかと不安を感じるほどだっだ。そんな中、いつものように近所回りを散歩して私の畑に差し掛かった時、圭司さんからゴールデンウイークに海外への旅行を誘われた。国内をすっ飛ばしてのいきなりの海外旅行に少し驚いたけれど、うれしかった。3泊4日くらいで行くことになり、私たちはその日を楽しみにお互い仕事や家事を頑張りその日を迎えた。――――――――――― 初めての夜 ―――――――――――旅行先の1泊目はお疲れ様タイムということで嘘のようだけど、友だち関係のように長年連れ添った夫婦のように疲れをとるため、お休みのキスだけをして静かに 就寝した。そして翌日はクイーンズタウンで観光を楽しみ、早めにホテルに戻った。今宵こそは私たちにとっての初めての夜で暗黙のうちに迎えた瞬間、その時はきた。          ◇ ◇ ◇ ◇先にベッドに入っていた圭司さんからシャワーを終えたばかりの私は『おいで』と手招きされる。私はドキドキしながら彼の横に滑り込む。彼がすぐに手を握ってくれた。「こっち向いて」「何か恥ずかしい」そんな言葉を口にしつつも私は言う通り彼の方を向いた。するとゆっくりと彼の口付けが私の唇に落とされた。それは軽くそして深く、互いの唇が重ねられていく。彼が私を見て微笑んでくれ、このタイミングを逃さず私は自分の切なる望みを口にした。「私、あなたを抱きたい《肌を合わせたい》全身全霊で」

  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇キュンキュンする想い 第78話

    78引き続き、2月も畑を耕す作業は続いた。そして今日も、私は相変わらず彼が耕運機で再度作業している横で、チマチマと畑の端で雑草抜きをした。今日もこのあと2人で夕飯を摂る。朝のうちに仕込んでおいた炊き込みご飯とお豆腐とネギ、ワカメ入りの味噌汁、さわらの塩焼き、きゅうりとわかめ、おじゃこの酢の物が作業後に待っている。耕運機から降りてきた圭司さんと雑草を一通り抜き終えた私は「「お疲れ様」」と互いに声を掛け合った。しばし、私が空気の冷たさに手をこすっていると、彼が上から大きくて暖かい両手で包み込んでくれた。「えーっ、あったかい。どうして?」恥ずかしさを隠して私は彼に訊いた。「子供のように身も心も純真だからだよって言ったら聞こえはいいけど、心が単に子供なんだよ」「あっ、分かった。幼稚ってこと?」「そういうとこ……」話ながらいつの間にか、私はすっぽりと彼の腕の中にいた。『ずっと、こうしてたいな……』私は何て言えばいいのか分からなくて空を見上げた。「茜色の空がきれい……。とても幸せです」そんなふうな言葉がきれいな夕焼け空に感化され、口をついて出てきた。すると、圭司さんが私の頭の上にそっと顎を乗せて「僕も……」と言ってくれた。その瞬間不思議な感覚に襲われた。宇宙からそのまま地球に向かって、地球上の畑にいる私たち恋人同士をズームインして俯瞰されている気分になる。その視点は私の肉体を超えた存在だと感じる。初めての体験に私は心震えたのだったが、このあともっとすごい感覚を体験することになった。もともと根本さんには好感を持っていたし、自分たちが今生結ばれる縁だと知らされてからどんどん好きになっていったのは確かだけれど、一緒に夕飯を摂っている時にそれは……その感情は突然訪れた。私の心の臓が、もとい、私の心臓が俄かに騒がしくなってきたのだ。根本さんの食事をしている様子を見ているだけで恋しい気持ちが募り、そのあまりの気持ちの強さに私は落ち着きを失くす。彼を抱きしめて……頭も肩もその背中も腕も、全て自分のものにしたいなどという、襲ってしまいたいという欲情に付き動かされることに。こんな怖ろしい初めての自分《私》の感情など知る由もない彼は、いつもの通り紳士的な振る舞いで時をやり過ごし、車で帰って行った。どうしてこうなった

  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇畑仕事 第77話

    77 年が明けて1月は寒かったので、どちらかの家で過ごすことが多かった。そんな中、ドライブを兼ねてお寺巡りなどもした。そして2月の初旬の土曜日にはウォーキングをして、なまった身体を引き締めようということで、寒い中、その辺を散歩することになった。7~8分歩くと、ちょうど草ぼうぼうになった我が家の畑の側を通ることになる。足を止めて、私は根本さんに言った。「ここ家《うち》の畑なんです。数年前までは母の知り合いに野菜を栽培してもらってたのですが、その方もご高齢で足腰が弱ってきて作れなくなってしまって……。そのあとは若い人の知り合いもいませんでしたし、私もここからすぐに通えるようなところに住んでなくて、その上、そのあと父が亡くなり母親は再婚して遠方へ嫁いで行き、というようになって、結局畑は今のような状況になってしまいました。でも落ちついたら少しずつでも野菜を作ってみたいなぁなんて考えてはいるんですけど、広くはない畑ですがそれでも私一人だとちょっと手に余りそうな感じです」「野菜をもう一度作るための土にするのは手作業だけではできないですからね。家に車で運べる小型の耕運機があるので今度持ってきますよ」この日そんなふうに言ってくれた根本さんは翌週、約束通り畑まで運んでくれてその上、自ら畑をその耕運機で耕してくれた。今年は畑の回復を目指し植え付けをせず、自宅の庭や公園などで拾ってきた落ち葉を梳き込み除草剤は使わずに定期的に耕していけば、雑草の根も繁殖せずに秋には枯れた形になり、土と落ち葉も撹拌《かくはん》されるので来年は良い土壌になるんじゃないかと考えている。ということで、植え付けは来年までのお楽しみだ。何を育てようかなと考えるだけでもあぁ楽し。こうして1月のデートは畑の土壌作りに終始した。そして作業終わりには我が家でのまったりお家ごはんに会話タイム。

  • 『輝く銀河系の彼方から来しトラベラー』ー古のタビ人―   ◇離婚成立 第76話

    76私は翌日早々に離婚届を出しに行った。昨夜、よほど根本さんにもう夫から離婚届を受け取っていて、あとは出す だけであると話そうかと思ったのだが、やはりちゃんと届けを出したあとで 正式に離婚し、何のしがらみもなくなってから伝えた方がいいように気が して、話せていない。できるだけ早く伝えたいという思いから、離婚届を出した後すぐにメールで 伝えようかとも思ったけれど、これってメールで伝えるようなことじゃない ような気がするのよね。それで年内に話すことができればいいのにとうじうじ考えていたら、数日後 に根本さんから『除夜の鐘を聞きに行きましょう』とのお誘いがあり、何と か今年中に報告できそうな予感。大晦日になり、私たちは約束通り近隣のお寺《本能寺》に向かった。歩きながら道々、私は真っ先に 「実は先週夫の所へ行って離婚届を受け取り、月曜日に市役所へ行き、 出してきました」と、離婚が成立したことを話した。 「ちゃんと受理されましたか?」「はい、思ったよりあっけなかったです。 家を出た時は、いつかはっきりと離婚が決まって届けを出す日がきたら、 未練なんてこれっぽっちもなくても、多少感傷的にはなるのかもしれない って思ってました。けど、そういう感傷的になんてちっともならなくて、さっぱりとした気持ちむで役所から帰って来れました。たぶん根本さんのお陰だと思います」「なら、良かった。 じゃあ今からあなたのこと、下の名前で呼ばせてください」「はい」「美鈴さんも僕のことは圭司《けいし》と呼ばないと駄目ですよ」「はいっ、が……頑張ってみます」「うれしいです。あなたにしがらみがなくなって。 これでお天道様に恥じることなく付き合えますからね」「はい……」私は心の中で彼に謝罪した。『ごめんなさい。一度、他の誰かと結ばれてしまった身で』と。これは心の中でずっとこの先も思い続けると思う。だけど、彼に言うつもりはない。 こんなことを言ってしまえば、彼を嫌な気持ちにさせるだけだと思うから。 私が結婚する前に私たち、出会えれば良かったのに。だけど、欲張ってはいけないのかもしれない。 出会えてなかったことを考えてみれば、こんなふうな再会になったとはいえ、 今生で今からでも夫婦になれるような形で出会えたのだから。 しみじみと感傷に浸

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